2025年度 世界アルツハイマーデー記念講演会

テーマ「あなたの地域の　認知症の人とともに」

基調講演　「高齢社会おける在宅医療」～認知症にとって在宅医療とは～
シンポジウム「認知症の在宅医療を考える」

日時：2025年9月28日（日）
会場：千葉市民会館　小ホール

第1部　基調講演

「高齢社会おける在宅医療」～認知症にとって在宅医療とは～

講師：金井哲也氏　医療法人社団明康会　かない内科院長

「在宅医療について」：医療の受け方には、入院医療と外来医療と在宅医療があります。また、在宅医療を行う診療所には「在宅療養支援診療所（在支診）」と「在支診以外の一般診療所」があります。

在支診とは定期訪問診療・緊急往診・看取り・訪問看護・介護連携を行いますが、診療所によってはそれら全ての在宅医療サービスを実施しているとは限りません。かない内科では看取りまで行っていますが、在宅医療の醍醐味は「自分らしく亡くなる」ことだと感じています。

「私が経験した症例から学んだこと」：何人もの患者さんの治療経緯から、食欲低下が起こってきたらまずその事に対応する。それでも食欲が改善しないなら点滴加療を行う。そして栄養低下による褥瘡が起こらないよう予防策を講じる。そうすることで本人も家族も満足感を得ることを学びました。点滴については延命と捉えられる場合もあるが、本人と家族にとって最後に納得することが大切で、在宅医は一緒に迷いながら寄り添うだけと感じています。

自分にとっての治療目標は家族関係をバランスのとれた状態にすること。認知症本人の思いと主介護者の考えのバランスがとれて初めてお互いに「幸せ」と感じることができると感じています。

「在宅療養を継続するポイント」：家族介護者は息を抜く時がない上、今後どのくらい介護が続くのかとの不安と孤独を感じている。虐待や鬱で本人との関係性が壊れてしまうと在宅医療はできなくなってしまうので、主介護者のキャパシティーを増やすことが重要です。予後を知る事・情報を提供する事・認知症ケアの方法を伝えることを意識しています。一人で抱え込まないためにいろいろな専門職の方々と支えていきます。在宅介護が困難な方には病院や施設も勧めます。どこであれ利用者が笑顔で過ごせている場所であれば大丈夫です。

第2部　シンポジウム

「認知症の在宅医療を考える」

コーディネーター：金井哲也氏　シンポジスト：春名太郎氏（ウイング介護相談室）、冨岡美枝氏（なごみの陽訪問看護ステーション）、松本良子氏（介護者・薬剤師）、小峰美咲氏（グループホームノーマライ心の花）

各シンポジストからは、「ケアマネジャーの選定」について、「デイサービスやデイケア」の利用、「訪問看護」の利用、「施設入所」について、理想的な認知症の在宅診療とは何かをお話して頂きました。シンポジストの方々は普段から金井氏と関りがあり、お互いに信頼されている様子も伝わり本音の言葉も出ていました。やはり在宅診療のかなめはケアマネジャーだと改めて感じたシンポジウムでした。